| 10月下旬のパリは気候が良く、かなりの日数を着物で過ごした。日本にいるときより着物で過ごす時間が長いのは、丁度着物ですごすのに良い気候だったせいもあるし、着物が好都合なほかの理由のせいもある。
 
 その昔、ジャポニズムのブームを起した国だけあって、外国の民族性に対する敬意をはらうことを、フランス人は忘れない。
 シラクの相撲好きは日本でも有名だが、フランスにはそもそも、国や民族の独自の文化を尊重し、敬意を払うという土壌があるのだ。
 フランス人のそういった側面を、私は非常に尊敬している。さすがヨーロッパ人だ。
 
 パリを着物でよちよち歩いていると、混んでいても道が開く。つまり、みんなが道を明けてくれるのだ。この着物を着た日本人に対して。
 
 またあるときは、 身なりの良い老女がにこにこと近寄って話しかけてき、着物にさわって喜んでいた。
 公園では若い息子と老人の親子連れがやってきて、「日本の着物が好きだから、一緒に写真に写って欲しい」といって、カメラでぱちり。悪い気はしない。が、実は正式な着方で着ていなかったので、記録に残るのはちょっと気になる。外国だから、手抜きしてたのだ。
 
 その他にも駅で、マルタ島あたり(旧植民地?)にルーツのありそうなエスニックな顔立ちの男性が英語で話しかけてきた。(日本人がフランス語が出来ないのは、フランスでは常識らしい。)
 彼曰く「僕は君のスタイルが好きだ」、そこまではいい。その次に、「えーっと、君は中国人?」・・・おいおい。。
 
 ところでこの着物姿でいるとき、路上で体当たりされたこともある。道幅がいくらでもあるのに、わざとぶつかってきたのだ。相手は黒人の若い女。
 パリには黒人が驚くほど沢山いるが、全部とはいわないまでも、やはりルーツからいって、自分達がフランスの歴史を形成した人種でないことはわかっているので、そのあたりからアイデンティティの問題でも発生しているのではないか?と、感じてしまう。
 
 というのも、白系フランス人ならまず、着物に対して嫌な対応はしてこないが、黒人ではたまにこのようなことがあったから。
 ちなみに現地在住の中国人の、着物へのリアクションはというと、これまた非常に良い。もしかしたら、中国本土より良いかもしれない。
 
 何事も経験である。
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